買っちゃった浴衣

高校野球中継でも流しながら扇風機を回し、蛍光灯は付けず、隙間から差し込んでくる日の光だけの薄暗さが落ち着く。体操着は着てるけどランドセルを散らかして寝転がる。つまり夏休みである。宿題が終わったらプールに行くつもりで、水風船やスクール水着を畳の上にほったらかしている。外では学生服の人影が、休みでも勉強が忙しいのか。柱の傷、木彫りの熊、プードル犬のシール、堂々たる長野県の地図ポスター、わけもなく貼ってあるレースクイーンのポスター、誰も読まなそうな本棚、薄汚れていて開けたくないフスマ、このへんは見慣れた風景だ。和紙の折り紙の着物人形、閻魔大王の人形、モンチッチ、神棚の上から睨んでくるダルマ、偉い人の肖像画、ちゃっかり家の中に入って来ているカミキリムシやデカい蜘蛛。ちょっと不気味な物たちが並んでいるおばあちゃんちだが、もっとヤバいヤツがいる。鈴の音が近づいて来た。アネキがいつも足首に付けてるリングの鈴だ。切り揃えたボブヘアーが眩しい上に、お花畑の模様のキャミワンピ1枚の姿で挑発してくるこの魔性の女は、桜の花模様のおとなしい柄の浴衣を広げてみせる。ここで着替えるのか。